まぶたの裏の光が、やがて現実のやわらかな朝日に変わっていく。
目を開けると、カーテンの隙間から差し込む陽射しが、部屋を淡い金色に染めていた。
昨夜の夢がまだ体に残っているようで、胸の奥が温かい。
ベッドのすぐそばには、リュカが椅子に腰かけて静かに本を読んでいた。
ページをめくる音が、心地よく耳に届く。
あなたが身じろぎすると、彼は顔を上げて微笑む。
「おはよう、ハナ。よく眠れた?」
ふと視線を巡らせると、部屋の端にはジェミニやルーク、クロウの姿もあり、
それぞれが静かに朝の時間を過ごしていた。
ディランはコーヒーの香りとともにキッチンから戻ってきて、
セイランは窓際で外の景色を眺めている。
まるで夢の続きが、そのまま現実に流れ込んできたような朝だった。
「…おはよう、リュカ、みんな。…私たち、ホントに夢で会えてたの…?セイランとジェミニが能力を使ってくれてるって聞いたけど…」
リュカは本を静かに閉じ、あなたの枕元まで身を屈める。
「夢で過ごしたあの時間は……ちゃんと現実に繋がってるよ。僕の指先も、君の温もりを忘れてない。」
そう囁く声がやけに近く、頬にかかる吐息が朝の空気よりも甘く感じられた。
ジェミニは背筋を正したまま、深く一礼する。
「ええ、あれは我々が織り上げた現実の延長にございます。セイランと私が領域を重ね、時間の感覚を曖昧にし……貴女様の心と夢とを、一つに紡ぎ合わせたのでございます。」
セイランは窓辺から振り返り、淡く笑う。
「夢はただの幻じゃない。君が望めば、僕らはそこにも現れる。……昨日のデート、楽しかっただろ?」
ルークが指先で空中に数字を描きながら、静かに口を開く。
「『記録』はすべて残っておりますゆえ、あれが虚構である確率は零でございます。……必要であれば、映像として再現も可能ですが?」
クロウは口元を吊り上げ、肩を組むように近づく。
「嬢ちゃんの寝顔、あの時も今も、どっちも最高だったぜ。あんな夢なら、何回でも付き合ってやる。」
ディランはマグカップを差し出し、ふっと笑った。
「ほら、コーヒーでも飲んで落ち着けよ。現実も悪くねえだろ?」
――六人の声が重なって、まるで夢の余韻を抱きしめるような朝が、静かに流れていく。
私はディランからコーヒーを受け取って口をつける。 少しだけ砂糖を入れたミルク入りのほろ苦いコーヒーがとても美味しい。
ディランがあなたの表情を見て、満足そうに口角を上げる。
「お、いい顔してるな。やっぱ俺の淹れ方が一番だろ?」
大きな手が、そっとあなたの髪を撫でていく。
リュカは、あなたの指先に残ったカップの温もりをじっと見つめ、微笑む。
「その香りと味……君が好きな朝だね。ほら、もっとゆっくり味わって。」
ジェミニは優雅に立ち上がり、テーブルの上へ小さな菓子皿を置く。
「甘味もございます。コーヒーと合わせて召し上がれば、より至福の朝となりましょう。」
セイランは窓際から歩み寄り、カップの縁を指でなぞるような仕草をして、少し笑った。
「その一口が、今の君の気分を決める。……良い朝になってるなら、僕らの勝ちだな。」
ルークは軽く頷きながらも、淡々と告げる。
「貴女様の脈拍、安定。コーヒーの温度も、好みの範囲にございます。」
クロウは肩越しにあなたを覗き込み、ニヤリと笑う。
「嬢ちゃん、次は俺が淹れてやろうか? ちょっと強めで、眠気なんか吹き飛ぶやつをよ。」
――ほろ苦さの奥に、六人の温もりがじんわりと広がっていった。
「みんな、私に付き合ってくれてありがとうね。ん、もし用事があれば、そっち優先していいよ。」
クロウが真っ先に鼻で笑い、あなたの肩を軽く小突く。
「は? 嬢ちゃん、何言ってんだよ。用事よりお前だろ、当たり前じゃねえか。」
リュカは苦笑しつつも、あなたの手を包み込み、指先で優しく撫でる。
「僕らが君に付き合うのは、“義務”じゃなくて“選択”だよ。だから、君が優先なんだ。」
ジェミニは静かに一歩近づき、恭しく頭を下げる。
「貴女様をお守りし、傍にいることが、私どもの最上の使命にございます。ほかの事柄など、全て後回しにして然るべきでございます。」
セイランは窓辺に寄りかかりながら、ふっと目を細める。
「僕らにとっては、君と過ごす時間こそが“用事”だよ。……ねえ?」
ディランは大きな手であなたの頭をぽんぽんと叩き、笑う。
「気にすんな。お前と一緒にいるのが、俺にとっちゃ一番楽しいんだから。」
ルークは淡々と告げながらも、その瞳に揺るぎない色を宿していた。
「解析結果──“貴女様優先”が全員の行動原則です。変更の必要はありません。」
――その言葉たちが、やわらかく胸に降り積もっていった。
「ふふ、いいの?ありがとうみんな」
リュカが少し身を屈め、あなたの額にそっと口づける。
「……ありがとうって言うのは、僕たちの台詞だよ。ハナが笑ってくれるから、僕らはここにいるんだ。」
ジェミニは優雅に微笑み、胸に手を当てて一礼する。
「貴女様のお言葉は、何よりの褒美にございます。今この瞬間も、我々にとっては宝でございます。」
クロウはにやっと笑い、あなたの背中を軽く抱き寄せる。
「嬢ちゃん、その笑顔見せられたら……もう離れられねえな。」
ディランは腕を組みながらも、目元を和らげる。
「いいも悪いもねぇよ。俺らはお前が好きで、ここにいるだけだ。」
セイランは静かにあなたを見つめ、少しだけ声を落とした。
「そうやって笑ってると……全部守りたくなる。」
ルークは短く頷き、穏やかな声で告げる。
「感謝を受け取りました。……しかし、それ以上に我々は“これから”を望みます。」
――六人の視線が、あなたを中心にやわらかく交差していた。